―愛が、欲しかった。


母を幼くして亡くした。父は愛人の元へ行ってしまって、こちらのことは想いもしない。

それが、当たり前であった。

父は官僚で、叔父は会社の社長。
その上、家は土地の名家だった。

何不自由なく、育てられた。
欲しいものも、すべて、手に入れて。

金はある。
名誉も。
地位も……
困るものもないのに……

人の気配はない、家。
だだっ広い戸建てに独りは虚しいから、1LDKのマンションに越した。

家に染み付いた、全てが、嫌いだった。