なのに
立花先輩、美月さんは認めないくせに、私は応援してくれるのかなって思ったら
そんなの……
私は篠田くんを意識してしまうに決まってるじゃないか。
視聴覚室の扉の前で、深呼吸。
廊下から中を覗くと、まだ美月さんはいない様子だった。
よかった、間に合った…。
早く篠田くんに渡して、退散しよう。
ガラガラ、とわざとらしく音をたててドアを開けたのに
篠田くんは寝たまま動こうとしない。
……またかい…。
篠田くん、寝てる時の方が警戒心強いとか嘘でしょ。
「篠田くん」
「………」
起きてないし、起きそうな感じもないし…
無理やり起こすのも悪いし…。
起きるの待ってたら美月さんと鉢合わせちゃうかもしれないし…。