蜂谷くんは目をキラキラさせて、ずいっと顔を近づけてきた。
「久我です」
「いや、名字じゃなくて、名前」
「久我…桃奈、です…」
「桃奈…って、
マドンナに名前似てんね」
うっ…
絶対言われると思った。
「あ、マドンナでいいんだっけ?
エンジェル?ヴィーナス?」
「……知りません」
「アハハごめんごめん。
エンジェルでもヴィーナスでも、桃奈ちゃんみたいな地味子と比べたら可哀想だよね」
失礼極まりないな、蜂谷くん。可哀想なのは私じゃないんかい。
マドンナっていうのは、その名の通りこの学校でマドンナ扱いされてる美少女、美月百華さんのこと。
人によってはエンジェルやらヴィーナスやらナイチンゲールやら…たくさんあだ名がある子だ。
軽くいじめじゃないかと思うレベルだが、彼女がとてもモテるが故…ということだろう。