そんな私の気持ちなどわかっていない篠田くんは



ケースを見つめたまま続ける。




「告白されては、名前を聞いて。
それで百華だと勘違いしてた。

久我と話していったら、
俺は久我に惹かれてた。
久我だったらいいのにって思った。

そしたら、南が言ったんだ。
久我の名前が、『桃奈』だって。

やっぱり運命だと思ったよ」




いや…だからクラスメイトの名前くらいは最初に覚えておこ…。



そしたらもう少し早く気付けたかもしれないのに。




「……で、それと同時にさ、
久我にいっぱい、謝りたかったんだ」




今度は眉をさげ、悲しそうな顔をした。




「あの時怖い思いをさせたこと。
巻き込んで、怪我をさせたこと。
ここで寝てた時にくれた絆創膏、寝てた時にくれたお菓子、久我だったんだって最近まで気付かなかったこと。
百華に嫌がらせされたこと…
全部、本当に、ごめんなさい」