「……はよ」




その人は、秋穂に抱きしめられたままの私の頭にぽんと手を乗せて、



優しい声で、挨拶をした。




「お、おはよう…篠田くん」



「マスク…風邪?
大丈夫か?」



「うん。
もうほとんど治ってるから、大丈夫…」




さっきの新聞の記事を思い出して、なんとなくぎこちない話し方になってしまう。



私が休んでる間に、篠田くんもショックなことがあったんだ。



原因とか…本人に聞いてもいいのかな?




「あの、篠田くん」

「あ、久我」




篠田くんに声をかけたら、



篠田くんが私を呼ぶ声と重なった。




「あ…ごめんね。なに?」



「……んー、と。
話したいことがあって。
昼休みとか、時間もらってもいいか?」




緊張した面持ちで言う篠田くんに、コクコクと頷いた。