「……脅しのつもりか」



「そう思うならそうでもいいよ。
でも、考えてみてよ」



「……なにを」



「わたしと別れて、久我さんを選ぶメリットを」



「久我は関係ないって。
……俺を助けてくれた本当の女の子を探すだけだ」




それについても、



久我が無関係だとは思ってないけど…。




「あぁ…そうなの。
でもその女の子もどうだろう?」



「……なにが」



「仁はわたしがついた嘘を信じてた…。
じゃあ、その女の子は?
本当に怖い思いをして、思い出したくないかもしれない。
仁の顔を見るだけで、つらいことを思い出して傷付くかもしれない…

それでもその女の子を探すつもりなの?」




百華の言葉を聞いて、何も言えなくなる。



……そうだ、俺、



百華はずっと、怖い思いをしたことを思い出したくないんだと思って触れてこなかった。



……あの時の女の子も、そうじゃないだろうか。



百華みたいな嘘なんかじゃなくて、本当に触れられたくないことかもしれない。