百華がまた一歩俺に近付き、その手が俺の肩に触れた。
その瞬間、俺の手は百華の手を強く掴んで、百華の体を押しのけた。
「いたっ…」
「……触るな」
チッ、と舌打ちをして、また百華を睨む。
「……仁、どうして?
わたしは嘘をついていた…たしかに、わたしは偽物よ。
だけど仁は、わたしを選んだ。
わたしと付き合っていることを幸せに思っていたんじゃないの?」
「……そうだ、そう思ってたはずだ」
なのに、どうしてかな。
俺の前に久我が現れてから、おかしくなったんだ。
「たしかに百華といるのが幸せだと思ってた。
でも、今はもう、そう思えない。
俺はもう、百華のことは、好きじゃないんだ」



