「昔俺を助けてくれた時は、
すぐに出してくれたじゃん」



「…それは…たまたまよ。
それと、昔のことは思い出したくないから言わないでって言ってるでしょ?」




うん。そうだ。



あの時の女の子はきっと…すごく怖い思いをしたと思う。



だから“思い出したくない”って言葉を安易に信じてた。



……でも、そうじゃない。




「百華」



「なに?」



「……付き合う時に返した缶ケースがあっただろう?
あれを渡してくれ」



「缶ケース?
あぁ…これ?
仁が思い出のものだって言うから持ち歩いてたわ」




ふふ、と笑って、持っていたポーチから色あせた缶ケースを取り出し、俺の手に乗せた。



…ほら、やっぱり。




「絆創膏持ち歩いてないって、嘘じゃん」



「え?」



「この缶ケースに絆創膏いれてるだろ?」