「思い出すのは、つらいかもしれないけど、
なにか、思うこと、あるよね?」



「………」




真剣な顔で私を見つめる先輩の瞳が、僅かに揺れる。



『そうであってくれ』。そう言ってるみたいな、瞳。



そんな真剣な先輩に、嘘をついたり、誤魔化したりすることは出来なくて…。





「……あの時、高校生のヤンキーが狙っていたのは、私じゃなかったんです」



「……やっぱり、キミがそうなんだね」




ホッとしたように息を吐いた先輩が、



とても嬉しそうに目を細め、



でも、少し悲しそうに眉を下げて笑った。