「……おでこ、見せたくないの?」 「…あんまり」 「どうして?」 「……苦い、思い出なので」 前髪を押さえるようにしてうつむくと、 先輩が私の正面に移動した。 「桃奈ちゃん」 「はい」 「ピアス、今持ってる?」 そう言いながら先輩が手を出すので ポケットからピアスを取り出して、先輩の手に乗せた。 「これを渡したのは、 何かのスイッチになるかなと思ったんだよ」 「……」 「でも、思い出したくないことだったかもしれないね」