「俺のジャージ持ってきてやるから、
ここで待ってろ」
「ありがとう」
そんなやりとりが聞こえた後、
トントン、と1人分の足音がだんだん近付いてきて。
「あ、」
隠れていたはずの私は、立花先輩とバッチリ目が合ってしまった。
「どうしたの、こんなとこで。
俺に用だった?」
それともあっち?と上を指差す立花先輩。
でも篠田くんが言ったことで、私の用はなくなってしまってるから、
なんでもないと言おうとすると。
「桃奈ちゃん、なんでジャージ?
髪も少し濡れてるし…あ」
そこで何かを察した様子の先輩が、一瞬、上にチラッと視線を向けた。
「仁のカーディガン、
もしかして桃奈ちゃんが持ってるの?」
「……はい…。
篠田くんが貸してくれたんですけど、
篠田くんが寒いかもと思って先輩に相談をしようと…」
「なるほどね」



