伊織 side



左手には、大きめの紙袋


その中には、俺たちの苦い思い出が入っている


「伊織、緊張してる? 手が震えてる。」


そう由紀に指摘されて初めて気付く


「落ち着けよ。 お前の兄ちゃんなんだろ?緋織は。」


「ああ。だからこそだ。 真実を知ることが、どうしようもなく怖い。 今までどこかで緋織から逃げてたんだ。」


緋織を探す一方で、緋織が見つからなければいい


そう思っていた。 思ってしまっていた


自分が知らない、何かを。


緋織をあんな瞳にさせた何かを知ることを



拒否して、いたんだ