「おばさん。 あの、パーカー、ない?」
ガチャガチャと皿洗いをしているおばさんの背中に言葉を投げかけた
ピタリ
さっきまで水の音と皿の触れあう音がしていたのに、急に静寂が訪れる
「............どうして?」
おばさんの声は、どこか震えていて
「確かめたいことがあるんだ。 じゃないと、俺は一生後悔する。」
「............そう。
———ひおくんに、会いに行くのね。」
「え? おばさんなんか言った?」
「何も言ってないわ。 そこの箪笥の中に入っているわよ。」
ありがとう。そう言って外へ出た俺は
「———もしもし? ひおくん———?」
おばさんが電話をかけていたことを、俺は一生知ることはない