沈黙。



夏休みの図書室。

開け放った窓から差し込む8月の日差し。

風に揺れる木々のざわめき。

グラウンドで走る運動部員たちの声が遠くに聞こえる。
静けさに包まれた優しい空間。



目前に立ちはだかる数学の問題に少しの休戦を告げ、顔を上げる。

目に入るのは、もう見慣れた顔。

肩に触れるか触れないかの、ちょっと長い髪。
明るい髪が日に透けて綺麗。
伏したまぶたからのびる長いまつげ。



思わずみとれていたことに少し恥ずかしくなって、慌てて手元の携帯電話に目を落とす。


「あ、千春くん12時だよ。午後から部活だよね?」


向かい合わせで座っている私と目が合う。
突然呼ばれたから、少し反応が鈍い。


「ああ・・・ハイ。樹[いつき]さんもメシ行きますか?」

「うん。行く。」



私たちは机の上に広がっている教科書たちを片付け始めた。




急に外に出たから、眩しくて目がチカチカする。
中庭の適当な場所に座って、千春が来るのを待っていた。
お尻に当たる青々とした芝がちくちくくすぐったい。

こうして、朝から2人しかいない図書室で勉強して、中庭で一緒にお昼を食べて、午後千春くんはバスケ部の練習に行って、私はまた図書室に戻る。

この夏休みの毎日だった。