私が連れてこられたのは、この学校に咲く大きな桜の木の下。桜があちこちに咲いている。

その木にもたれ掛かって絵を描いている早川先輩は、私を見ると「え?」と声を漏らした。

「ほらほら~……きちんと伝えなよ!」

そう言って、小林先輩はどこかへと消えていく。

「まじでやりやがったな、あいつ……」

「何がですか……?」

私が問いかけると、顔を赤くした早川先輩は「いや、こっちの話」と微笑んだ。

「早川先輩、顔が赤いですけど大丈夫ですか?」

私が問いかけると、早川先輩は首を縦に降る。

「あ、あの……俺は、その……ずっと前から紗綾が好きです!お、俺と付き合ってください」

早川先輩の言葉に、私の頬は一気に熱くなった。やばい。泣きそう……。

「……」

緊張した雰囲気が辺りに漂う。私は、微笑んで口を開いた。

「私も先輩のことが好きです。よろしくお願いします」

そう言うと、早川先輩は安心したように微笑んだ。

「えっと、良かったら……俺のこと、下の名前で呼び捨てしてくれないかな?」

「……え?良いんですか?」

「うん。良いよ」

私は、笑顔を崩すことなく泣きながら口を開いた。

「これから迷惑をかけるかもしれないけど、よろしくね。拓斗(たくと)」