「人は、それぞれ生き方があるよ。それなのに自分の考えを押し付けるって……きっと……間違ってるって思う……よ……」

話していて怒りの中に、ある感情があることに秋葉は気づく。それは、いつも気持ちを隠してばかりの秋葉の本当の気持ちをフランツが見抜いている証だった。

フランツの口から秋葉に話しかけられるのは、他の男子のような優しい言葉ではない。冷たい言葉だと誰もが思うだろう。しかし秋葉は、フランツが本当に冷たい人なのかどうかわからなくなっていた。

「おやすみ、リヒト。付き合わせちゃってごめんね」

秋葉は半分眠っているリヒトの頭を撫で、ホットミルクを飲んだマグカップを片付けて部屋へと戻った。



それから、秋葉は相変わらずフランツから「意見を言え！！」と怒鳴られる日々が続いた。

ムッとするが、怒鳴り返すことなど秋葉にはできない。思ったことをフランツに訊ねることもできないまま、時間だけが過ぎていった。