フランツに見つからないようにしていた秋葉だったが、結局見つかってしまった。図書室にいるためか、いつもより小さな声で怒鳴られる。

「Tut mir leid……(ごめんなさい……)」

秋葉はうつむき、謝った。フランツはすぐに「なぜ謝る必要がある?」と訊ねるが、答えることなどできない。

図書室に来るんじゃなかった、と秋葉は後悔する。やっと得られた自由な時間にも自分を出すことができない、これほど苦しいことはないからだ。

「私、もう帰ります」

秋葉がそう言った刹那、「待て」と威圧的な声を出す。秋葉は足を止め、覇気のない顔をフランツに向けた。フランツは秋葉をまっすぐ見つめている。

「お前はなぜ人といつも合わせる?自分の意見を言わない?ずっと聞きたかった。自分を偽ってまでその友達とやらは必要か?」

ズキンと秋葉の胸が痛む。過去のことが頭の中に次々と浮かんでいった。もともと一人の彼にはわからない痛みだ。

「お前を見ているとイライラする。ヘラヘラ無理やり笑うな。うっとおしい」