秋葉は中庭へと連れて行かれた。緑にあふれた中庭には、朝早くということもあり生徒は誰もいない。

「フランツ……」

恐る恐る秋葉の話しかけると、フランツは歩く足を止めて秋葉の腕から手を離す。そして、ゆっくりと振り返った。

「お前、馬鹿だな。自分のことでは何も言わないくせになぜ俺の時に……」

そう言うフランツの頰は赤く、目も優しい。昨日見たフランツの顔だ。

「フランツも馬鹿でしょ」

負けじと秋葉も言い返してみる。フランツは怒ることなく秋葉の言葉を待っていた。

「あれだけ私に冷たくしてるくせに、昨日私にあんなに優しくして……。今だって私を教室から連れ出してくれたし……」

一度口から言葉が出てくると、少しずつ話し方を思い出していく。ずっと殺していた自分がようやく少しずつ生き返ってきたのだ。

「……俺は、一人が好きだ。群れることは嫌いだ。群れるということは、自分を殺さなくてはならない。それが嫌だったんだ。でも、全ての人間に一人になってほしいわけじゃない。ただ、自分をきちんと見せて互いにぶつかってほしいんだ。俺にはよくわからないが……それが友達というものだと思う……」