Q.I(きゅうあい)~短気で無垢で、天使な君を~



「──…何で……あんたにそんなこと分かるのよ……」

 しばらくして、柚葉は怒りを弛緩させたかのように呟いた。


「………………」


 ──俺に?

 何で分かるのかだって?


「……分かるに決まってんだろ。俺がどれだけお前のこと見てきたと思ってんだよ」


「………っ、」


 柚葉はグッと息を詰まらせるように、押し黙った。

 俯いているから、顔は見えない。

 しゃらりと揺れる柚葉の長い髪が、その表情を守るように隠している。



「……何よ、偉そうに……」


 そしてやがて、その髪の下から微かにため息が聞こえた。安堵の笑みを滲ませたようなため息だった。


「……ホント、偉そう。矢井戸のくせに……」


 そんな憎まれ口さえ零す。


「……うん」

「ふ……」

「はは、」


 曖昧に頷く俺を笑う柚葉に、俺もつられて笑う。