「……何よ、来たって何が──」 「しっ!」 俺の耳を引っ張る手を遮りつつ、柚葉の口の前に人差し指を立てる。 咄嗟に黙った柚葉も、通りを草むらの陰から凝視する。 「───……」 そして、言葉を失った。 通りには──。 母親、子供、父親、三人の家族連れ。 その父親は、紛れもなく──。 「──……。野波、先生……」 柚葉が、呆然と呟いた。