「…………っ、」

 案の定、柚葉は怒りと羞恥に頬を染め、グワッと鋭く、右足を俺の腰目がけて振り上げた。

 ゴォッと風が吹くと同時にひらりと舞う柚葉のスカート、そこから覗く素敵な御御足《おみあし》に心の中でガッツポーズをとるも、このままただ見惚れていては柚葉の強烈な蹴りを食らってしまう一方だ。

 咄嗟に中段の構えを取ろうとするが間に合わなかったので、俺は蹴りを避けようと、体を一歩後退させて、昔懐かしいマトリックスのアレのように腰を反らそうとした──。


 ……が。


 ビキィィィィィ!!!


「……ッ、ぐぉ痛ええ!! 腰ビキィィィなったぁぁぁ!」


 廊下に響く絶叫、そして悶絶。

 柚葉の蹴りをすんでの所で、しかも変な体勢で全力で避けたのが災いしたのか──俺の腰の筋だか骨だかが、猛烈な悲鳴をあげたのだ。