もうダメだ、そう思ったとき、ある意味タイミング良く、ある意味タイミング悪く、図書室のドアを叩く音が聞こえてきた。
ふたりしてドアの方へ顔を向けると、そこには教頭先生が立っていた。
「んん、朝美先生~…ちょっといいですか」
「ひぃっっ…えっ、あっ………は~いっ」
風のように走って図書室を出ていった朝美先生は、きっと冷や汗をかいているだろう。
「ふっ…くふふっ」
なんでいつもこんなにタイミングがいいの?
そして、先生は相変わらずいつも忙しそうだ。
席に戻っても、珍しく本を読む気にならなくて、ミステリー小説を閉じた。
ふとカーテンを手でよけると、オレンジ色の空が視界に広がった。
「……きれい…」
もし、ほんとうに神様がいるのなら、
――私はこの恋をどうすればいいですか?
空を泳ぐように飛んでいた小さな鳥が、だんだん遠くにいって、見えなくなっていく。
正反対の晴日くんに、私は恋をしてしまった。
恋はどうすることもできないくらい、
とても苦しくて、
でも、一人の人間を、こんなにも好きになることができるんだって、
私は初めて恋を知った。
恋は、私が思っていたよりずっと苦しい。
…とても…、とても、苦しい。
私はカーテンを閉めると、机に顔を伏せた。
前にもこうしていたことがあった。
それでそのまま寝ちゃって、夜の学校で忘れ物をした晴日くんに会ったんだよね。
……また会えないかなぁ…
…なんて。
「欲張りは…贅沢だね…」