わたしは晴日くんに恋をしているんじゃなくて、憧れている。
尊敬している。
戸惑っている私に、先生は優しい声で、まるで物語を語るように、ゆっくりと話を始めた。
「恋は…、周りからみれば…そうね…、楽しそうに見えるでしょ?」
「でも、その人達もきっとたくさんの辛いことや苦しいことを二人で乗り越えてきたと思うのよ」
「本当の恋はね、楽しいとか、キラキラだけじゃない」
「辛いことや、苦しいって感じることもある。それに、離れようかなって思うことも」
バラバラになった本のページがテープで貼り付けられてゆくように、晴日くんと重なった。
晴日くんに迷惑をかけるくらいなら離れようと、そう思った自分がいる。
けれど信じたくはなかった。
違う、きっとこれは恋じゃない。
先生の話から耳をふさいでしまいたいのに、聞きたいと思っている自分もいる。
「だってそれは」
「本当にその人のことが大好きだから」
「…恋をしてるから」
先生は、ふっと柔らかく微笑んだ。
「少しのことで落ち込んだり、相手を思うあまり独占しようとしたり、自分ではコントロールできなくなったり、」
「信じることが、怖くなったり」
そんなにたくさんの感情が、恋に繋がっているなんて知らなかった。
「でも恋はいい方にも、変えてくれる」
「恋人がいるおかげで、毎日が楽しくなったり、新しい趣味に出会えたり、未来が楽しみになったり、」
「明日会えるって思うだけで、大変な仕事をがんばれたり、」
「友情から恋情に変わったり、」
「……憧れから恋に…変わったり」
先生は全て見透かしたように、わたしを真っ直ぐな瞳で見つめた。
バラバラだったページが、ひとつひとつ貼り付けられてゆく。
…憧れから…恋に……
もし私の気持ちもそうだとしたら、きっとこの物語はバッドエンドだ。
はじめからそう分かっている、
望まれない想い。
私がずっと苦しいのは、
__恋を、しているから?



