へっ?!

どうしよう、なにか言われる…


バカにして笑われたり、気持ち悪いって言われたりするんだ。


わたしが拳にギュッと力を入れたとき、目があった女の子は明るい声で言った。



「おはよ」



まるで当たり前のようにそう言って、何事もなかったかのように、わたしの前を歩いていく。


「あの子ともだち?」

「や、分かんない」

「あははっ…なにそれ、まじうける」


「けど朝に目あったら、おはようでしょ」


明るくてハキハキしてる声だから、少し遠くを歩いてたって、そんな会話が聞こえてきた。


まだ状況が理解できずにその場に立ち尽くすわたしは、一人の女の子の背中を見つめることしかできない。



…おはようって…言った?

わたしに…?


廊下のど真ん中で立ち尽くす私と、もう背中が見えなくなるほど遠くに行ったあの子。


まるで違う世界にいるみたいだった。


あの子の当たり前は、わたしとは全然違う。

あの子が普通だと思っていることが、わたしには普通じゃない。



……なんて素敵な当たり前なんだろう



あの子の普通は、少し晴日くんと似ている気がした。