「おはよっ」
下駄箱でクツを履き替えていたとき、すぐ近くでそんな声が聞こえてきた。
だから慌てて後ろを振り向いた。
誰かが私に挨拶をしてくれたんじゃないかって反射的に期待したんだと思う。
でも、そう思った自分がとても惨めに思えた。
私の視線の先で、笑い合う女の子がふたり。
…わたしにじゃなかった
どうして期待なんてしたんだろう。
惨めにも思えたし、恥ずかしいとも思った。
自分から挨拶をする勇気なんてないくせに、落ちこんでいる自分が、恥ずかしい。
トボトボ廊下を歩いていると、私の背後から複数の明るい笑い声が聞こえてきた。
「おはよー!」
「あっおはよ!ね、あれ見た?きのうのドラマ!」
「見てないー、興味ないし」
「え?彼氏いると恋愛ドラマ興味なくなんの?」
「あははっ」
楽しそうに笑って話すその会話に、わたしは自然と耳をすまして聞いてしまう。
…友達がいるとこんな会話をするんだ
そう思っているうちに、女の子達は私の横を通り過ぎてゆく。
思わずジッと見つめてしまった。
髪がサラサラで、笑顔がキラキラしてて、笑った顔がすごく可愛くて、女子高校生ってこんな感じなんだなぁ。
すごく楽しそう。
女の子たちの横顔を見つめながらそんなことを考えていると、一人の女の子と目があってしまった。