違う話に変えようと、もともと今日中に朝美先生に伝えるつもりだった言葉を口にする。
「今日もこの本の続き、借りていい?」
5巻まで読みすすめたから、次は6巻。
聞いてみたものの、先生がNOと言わないことは知っていた。
いつも、いいよって言ってくれるから。
「いいよ~」
頷いた後すぐ、先生は何かを思い出したように、「…あ」と声を出した。
そして朝美先生は、いきなり両手を顔の前に合わせて、眉をへにゃりと下げた。
「6巻から先はね、このまえ男の子がぜんぶ借りていっちゃったの」
「忘れてたぁ〜〜優ちゃんごめん〜〜」
「え~…」
「はは、ごめんごめん」
先生は力なく笑う。
楽しみにしていたからすごくショックだったけど、ここにある本は私だけのものじゃなくて皆のものだから、仕方ないと思った。
やっぱり恋愛漫画なんかは、高校生に人気なんだろうか。
「この本って人気なの?」
「うーん…借りていったのは、優ちゃんとその男の子だけよ」
「嬉しそうに持ってきてね、今ない1巻~5巻、返ってきたら教えてください!!って」
「あはは、すごい本気だね」
「でしょ~、可愛いかった」
優しく微笑む先生につられて頬が緩む。
……たしかに可愛いかも
「ほっぺを赤くしながら言いに来てくれたのよ…あぁ〜可愛いかった〜」
朝美先生は、両手を頬にあてて、甘くとろけるチョコを食べたかのように、はにかんだ。
「…先生メロメロだね」
「あははっだって少女漫画を持ってくる男の子って…なんか可愛くない?」