《 私には好きな人がいる 》


…いきなりだな


《 私はその人のことが好きで、好きで 》

《 本当に大好き 》


《…でも…… 》



《 告白はしない 》



……え?



《 だってそれは 》

《 望まれない想いだから 》


…望まれない…想い…


…なんだか可哀想



「優(ゆう)ちゃん、どう?」

「ん?」


朝美先生に名前を呼ばれて、私はハッとして振り返った。


ハッとするぐらい、夢中になって読んでいたんだと思うと、なんだか少し恥ずかしい。


「初めての恋愛漫画」


…うーん

「なんだか、不思議」



こんな気持ち、体験したことないんだもん。

私がそう言うと、先生は優しい笑顔で笑った。


「ふふっ…優ちゃんもいつか、恋したら教えてよ?」


…恋…


…私が誰かに恋をする日がくるのかな?


わかんないけど…



朝美先生になら、なんだって話せそう。



「…うん」


「もしかして優ちゃん、好きな人いるの?!」


えぇ?!


「なんでそうなるの?!」

「だってなんか今、間があったよ?!」


「す、好きとかじゃない!」


「…けど……」


…けど…


…これは、恋じゃない


「でも、」



「憧れてる人…がいる…」



私はこんなことを言ってしまった自分に、少し驚いた。



「…憧れ?」


先生はキラキラした目で、私を見つめている。


「そう…」

「へ~、どんな人?先生知ってるかなぁ」


先生は私の前の席に座ると、興味津々にそう言った。



…どんな人…かぁ…


「…私と」



「正反対の人だよ」