「あははっ…っ!ね!ここのベランダ誰もいないみたいだよ」
いきなり複数の女の子達の声がした。
それに声はすぐ近くから聞こえてくる。
ドキドキと速さを増した心臓の音が、私に危険を知らせているような気がした。
咄嗟にメロンパンを背中に隠して、もうすでに壁に背中をつけているのに、もっと背中を壁にひっつける。
ガラっと音を立てて、誰かがベランダに入ってきた。
……誰かきた
ど、どうしよう
「ここで写真とろうよ!」
「いいねっ」
楽しそうに会話をする女の子達と、ついに視線が合ってしまった。
……あ
慌てて目を逸したけど、きっともう遅い。
「え…待って、全然気配感じなかったんですけどー」
「あははっ幽霊かよっ」
バカにしたように笑った後、女の子たちはベランダから出ていってしまった。
「………」
ちょっとの間だけ落ち込んで、それからすぐにまたメロンパンをかじった。
こんなの、いつものこと。
心の中でふっと笑う。
冷たい風がスカートを揺らして、足が寒い。
「…はぁ…」
「ほんと私って…」
「……なんでこんななんだろ……」
誰にも聞こえることないその言葉は、この冷たい風にどこまでも飛ばされていくのだろうか。



