声を出そうと大きな口を開けてみても、ヒューと息を吐くことしかできなかった。


「………」


………むりだ


私には……できないよ



大きな声だすのがすごい恥ずかしい。


自分で取りに行くのも怖い。

目立ちたくない。



…こんなこともできないなんて、私はほんとうに…ダメだなぁ…っ




「先生~~!そこの列、」


「プリント1枚足らないっすよ」



教室中に響き渡るくらいの大きな声で、誰かがそう言った。


私ができなかったことを、その人は息をするように簡単にできてしまう。



「お~すまん、はい、プリント」


「…あ、…あり…がとう…ございます…」



「はい、じゃぁ皆まずプリントに名前かいてな〜」



__ポタ_


プリントに、涙が滲んだ。


………嬉しくて、嬉しくて、涙が出た



「…晴日くん……がとうっ…」




「……ありがとうっ……」




そう本人に伝えられる勇気は、私にはない。


皆にとっては、晴日くんにとっては、どうってことないことだって分かってる。



…だけど、


でも私にとってはそれが、すごく…すごく嬉しくて、



私にとって晴日 心くんは、

キラキラした、憧れのヒーローなんです。



名前を知ったあの日から、ずっと。