あの時の、

知らなかった頃の私に言ってあげたい。



…これから晴日くんを、目で追ってしまう病になっちゃうよ…って



「…はっ…くしゅんっ…」



こんな寒い冬に、ベランダに一人で来て景色眺めてるのって、きっと私くらいだよね。



結局ここに来ても、考えてるのは晴日くんのことばっかり…



「5分前だぞ~」


あ、先生の声だ

休み時間って短いなぁ…



教室に戻って静かに席に座ると、すぐにチャイムの音が鳴った。


「きりーつ」

「れい~」


「「おねがいしま~す」」


やる気のない、気怠げな号令に合わせて頭を少し下げた後、私はまた静かに席に座った。



みんなが席に座ると、先生はいつものようにプリントを配り始める。


「今日のプリント配るぞ~」


国語の先生は、授業をプリントで進める先生で、ノートを取らなくてもいいから、私的には楽だ。



「よし、プリント後ろまで回ったな~?」



……そう、思っていたのに


「………」



…私のプリントが…まわってこない…



前の人は…?

私はチラッと前を覗く。



…前の席の人はちゃんとプリント持ってる


先生に言わなきゃ。


「………っ…」


…言わなきゃ



プリントが1枚足りませんって言うだけっ



「……~っ」