_4月_
『おらぁぁぁっ』
大きな叫び声と共に、ボールが風のように速く横を通り過ぎた。
『うぉぉーーっ』
……今日は球技大会です
クラス対抗で男女一緒にドッジボールをしましょう、なんて言った体育の先生に誰か言ってくれないだろうか。
『お前にげんじゃねぇーーっ』
『ぎゃぁぁぁぁぁ』
…すごく怖いのでどうかもう止めてください…って。
男子のボールは女子と比べ物にならないくらい速くて強い。
だから…
『…あみちゃんごめんね』
こうして女子にだけ、優しくあててくれる男子がほとんど。
ただ、本気で男子同士であてようと思ったボールが、こっちに飛んできてしまった時が異常に怖い。
…速すぎてボールが見えない
こういう時、実は存在が薄い人が有利だったりするんです。
隅っこにいれば、あてられない気がする!
ほら、みんな私なんか見えてないっ
_ドスッ
『ぐへっ』
……うぅっ…痛い
地面にコロコロと転がるボールを見て、お腹にボールが直撃したんだなと思った。
『うわっ…大丈夫?』
周りにいた女の子達がそう声をかけてくれたけど、痛すぎて『あはは…』と変な返事を返すことしかできなかった。
なんとかコートから出て歩き始めた時、誰かが言った。
『俺のレディーに何すんだよっっ』
『お返しだ、おらぁぁぁぁ』
へ…俺の…?
聞き間違えたのかと思ったけれど、少し考えてみれば答えは出た。
あぁ、俺の“クラス”のってことか…
そしてこの時、初めてちゃんと晴日くんの顔を見たんだ。
無邪気で、真剣で、汗びっしょりで、
『うぉーー、晴日ナイス!!』
名前……はるひくん…
私にはないものをもってる。
そんな、同じクラスの男子の一人が、
すっごく輝いて見えた。