それからは皆、喧嘩することなく班を決めることができた。

最後は先生から修学旅行の説明を聞いて、なんとか無事、授業が終わった。



…みんな笑っててよかった


チャイムが鳴ると、私は静かに席を立って教室を出た。



私が向かっているのは、いつもの場所。

息をするのが少し楽な場所。



それは、廊下のくぼみにある小さなベランダ。



お昼休みはここで毎日パンを食べるし、お昼休み以外でも、たまにここへ来たりする。


_ガラッ


「わ~…やっぱり寒い~…」


冷たい風が、スカートをゆらゆらと踊らせた。


当たり前だよね…冬だもん

この寒さは、いつになっても慣れないなぁ。



「…はぁ……」


教室はなんだか息苦しい。

ここへ来ると、ちゃんと息を深く吸えたような気持ちになる。


早く放課後にならないかなぁ…


朝美先生に会いたい

本を読みたい


でも心地のいい放課後には、



……晴日くんはいない。



「………」



いつからこんな風に、晴日くんのことを考えるようになってしまったんだろう。

いつから、こんなに目で追うようになってしまったんだろう。



話したことなんか、一度だってないのに。



でも、ずっと今も覚えてる。

私が晴日くんの名前を知った日のこと。



今思えば、あの頃からなのかもしれない。


晴日くんを目で追ってしまう病になったのは。