「もう煌哉なんて嫌いだ」
「……あっそ」
結構怒っているというのに、返事が適当な煌哉。
いつも私ばかり振り回されている気分だ。
拗ねてるオーラを全開にしようと思った私は口を固く閉じ、じっとする。
けれど煌哉は一切反応を示してくれなくて。
電車に揺られていると、夜更かしが原因となりだんだん眠気がやってきた。
ここで寝てしまえば負けだというのに、だんだんと左右にフラフラする私。
「……千紗」
「なに」
ここにきてようやく煌哉が私の名前を呼んだため、ゆっくりと顔を上げる。
本当なら無視を貫かなければならないというのに、眠気に勝る怒りではなかった。
「眠たいんだろ?」
「んー、ぜんぜん」
「嘘つけ、フラフラしてる。
隣の人に迷惑かけるだろ」
そう言って煌哉は私の肩に手を添え、自分のほうへと引き寄せた。
そのため自然と煌哉に体重をかける形になってしまう。
「眠くないよ煌哉」
「いいから黙って目閉じとけ」
「うー…」
頑張って唸り、眠気を飛ばそうとしたけれど。
まぶたの重みには逆らえない。
結局目を完全に閉じてしまった私は、そのまま眠りに落ちていた。



