「ど、どうして起こしてくれないの!」
「千紗が気持ちよさそうに寝てたから」

「寝てたって何!
そこは起こすのが彼氏の仕事なんじゃ…」

「千紗が寝てる間に俺は俺で楽しんでたから大丈夫。
デートはまた今度で」

「……え」


嬉しそうな煌哉の笑みを前に、嫌な予感がした。


「ね、ねぇ…」
「ん?」

「私、起きる前すごく息苦しかったんだけど…」
「ああ、口塞いでた」

「はぁ!?」


な、なんてことをさらっと言うんだ。
え、殺す気?

煌哉は私を殺す気だったの!?


「い、意味わかんないどうしてそんな…ひゃっ」


その時、突然煌哉が私の首筋に触れてきた。
思わず変な声が出てしまう。

それからなぞるように指を伝わせ、どんどん胸元へと近づいていった。


「ま…っ」

これはもしや本気で襲われるのでは。
そう思ったけれど、途中で彼の指は止まる。


「……ん、綺麗についてる」
「へ…」

「キスマーク」


にこにこ嬉しそうな彼は、本気でオオカミか何かの獣だと思った。


こいつは人が寝ている間にキスマークを付けてきたというのか。