「一回くらい煌哉に勝ちたいなぁ…」
「それって俺が教えなくていいってことか?」

「ううん、もちろん教えてもらうよ」
「それだと意味ないだろ」


呆れたようにため息を吐かれるけれど。
煌哉に教えてもらった上で勝つように努力するのだ。

そうじゃないと赤点だらけになってしまう。


「千紗って俺に頼ってばっかだな」
「理解しようとしてるのにね…先生と合わないのかな」

「頭の構造的な問題だろ」
「あ、またそういうこと言って」


意地の悪いことしか言わない。


「まあでも頑張ったな」
「うん、頑張った!」

これで私の夏休みは確保されたようなものだ。
そうすれば煌哉に独り占めされて───


「……あっ」
「ん?」

「煌哉、夏休みどこ行く?」
「今言うか、それ」


確かにまだホームルームは終わっていない。
慌てて前を向いて先生の話を聞く。