「好きって思ってたくせに、俺は何も知らなかった。
美織が俺のせいで女子からいじめられていたこと」
思わず言葉を失った。
想いあっているのなら、ちゃんと話すべきだと言おうとしていたから。
なんて浅はかな考えだったんだって。
「美織の心が壊れて、ようやく俺は気づいたんだ。
本当にバカな人間だと思う。
好きならなおさら早く気づけよって」
ぎゅっと、自分の手を強く握る彼。
その手は震えている。
「だから美織に恨まれて当然なんだ。
憎んで恨まれるべきだとも思う。
幼なじみって肩書きのせいで、美織を傷つけた」
「……でも美織さん、今日会いにくるって」
「……え」
「水瀬くんに会いにくるって言ってた。
過去を引きずってるのは水瀬くんだけじゃないんだよ」
それなら今こそふたりで乗り越えるべきではないか。
美織さんは勇気を出してこの学校に来たのだと思う。
それなら水瀬くんも───



