私の知らない煌哉の素顔がどんどん見えてくる。

あんな愛おしそうな目も、優しい手つきも。
甘い言葉も全部。


私の知らない煌哉だ。



「夏原さん、話って何?」
「…………」

「夏原さん」
「……あっ、はい!どうしたの?」

「どうしたのって…夏原さんが俺を呼んだんだよね?」


そこまできてハッとする私。
なんという大馬鹿野郎だ。

煌哉のことを考えていたために、すっかり目的を忘れてしまっていた。


現在、昼休みの時間を使って水瀬くんを中庭へと呼び出した私。

それなのに彼と歩いている途中、煌哉のことを考えていただなんて何事だ。


今日の目的は水瀬くんと美織さんのことだ。

慌てて自分の頬を何回か叩いて煌哉のことを忘れるよう努力する。