「あー、勘違いするなよ?
タダで教えてるのも損してるなってだけだから」
「じゃあ家庭教師代でこれからはお金を…!」
「いや、お金なんていらねぇよ」
「じゃあどうしたらいいのさ!」
お金はいらないのにタダだと不満って、それはもう矛盾をぶつけて私を困らせたいだけじゃないか。
「……夏休み」
「夏休み?」
「千紗とどっかに出かけたい」
矛盾だらけの言葉にムッとしたけれど、少し照れくさそうに再度口を開いた煌哉。
それは私を誘うもので、不覚にもキュンとしてしまった。
「私と出かけたいの?
何それ、煌哉かわいいこと言う!」
思わず煌哉の背中を数回叩き、恥ずかしさをかき消してあげようと笑顔を浮かべる。
けれどそれが彼を不機嫌にしてしまったようで。



