本当に最悪だ、どうして私がこんな目にって。
「泣くほど嫌だったんだな」
「当たり前だよ、あんな強引なキス…本当に最低」
また不満を口にすれば、イライラしてどうしようもない気持ちになってしまう。
そんな私を煌哉は抱きしめてくれ、落ち着かせるように頭を撫でられた。
「落ち着いたか?」
少しして煌哉は私と距離をあけ、見下ろしてきた。
そしてぱちっと目が合うなり彼は小さな笑みを漏らす。
「千紗、化粧とれてる」
「えっ…嘘!」
すっかり忘れていた。
今日の私は化粧をしているんだってことを。
それなのに泣いてしまい、化粧が崩れているかもしれない。
「せっかく化粧したのにな」
「さ、最悪だ…とってくる!」
もしものため、化粧落としのシートを持ってきていたのが救われた。



