ここはディストピア あなたは亡国の騎士 わたしは愛玩物

困惑してる私より先に、シーシアがうなずいた。

そして、やっと私の手を離すと、改めてひざまずいて胸の前で手を組んで小さく祈りの言葉を唱えた。

どうやら神様に祈り始めたらしい。


……なんか、怖いんだけど……孝義くんが「南無阿弥陀仏」とすぐに唱えるのと同じかな、と無理やり自分を納得させた。



「先日、私は神様からお言葉を賜りました。」

シーシアは手を組んだまま、斜め上を潤んだ瞳で見上げてそう言った。


いやいやいや。

同じじゃないし。

完全にイッちゃってるよ、このヒト。


……孝義くんみたく幽霊と交流できるというのとは、次元が違う気がする。


むしろ、電波さん。


私は引きつる頬を抑えて隠した。



「神様は、何ておっしゃったのですか?」

黄緑色の瞳をキラキラさせて、リタがシーシアにそう尋ねた。


リタは、神様というより、シーシア信者だわ。


「イザヤの預かる娘を神の使いと思って仕えよ、と、言われたそうだ。」

ドラコは苦笑いを浮かべてそう言った。


こちらは、まったく信用してない言い方だった。


……まあ、そうよね。



「神の使い、ねえ。」

さすがに私も失笑した。



「私も、リタも、まいらの夢を見ましたよ。いささか変則的ではありますが、確かにまいらはシーシアさまには頼もしい存在だと思うようになりました。……まともにイザヤどののお相手をしていては、シーシアさまは衰弱してしまわれるでしょうから。」

ティガはすましてそう言った。



「なに?それ。私は弱らへんの?ひどーい!」

口をとがらせてそう言うと、リタがつっこんだ。

「いや、まいらは、イザヤどのがいなくなったら衰弱したじゃん。イザヤどのと一緒にいる時は、めちゃ元気で楽しそうだよ?……よっぽどウマが合うんだろ。」

「私もそう思います。同類なのでしょう。」

無表情でティガが同調した。



私は、ものすごく恥ずかしくなった。


イザヤが癖の強いヒトだってことは、もう充分わかってる。

そのイザヤと私が同類って……

やっぱりショックやわ。