ここはディストピア あなたは亡国の騎士 わたしは愛玩物

ティガの言葉に、ドラコは気のない相づちをし、シーシアは目を細めてうなずいた。


リタもまた、ホッとしてうなずいていた。


よく考えてみれば、場所こそオーゼラ国のイザヤの館だけど、この4人……ティガ、ドラコ、シーシア、リタって、カピトーリのけっこう上流貴族のお家の親戚同士なのよね。

双子と、腹違いの姉妹で、いとこ同士。


私は興味深く4人を観察していた。


恋愛の矢印は、リタ→ドラコ、ドラコ→シーシア、なのよね。

そして、話をリードするのはドラコ、まとめるのはティガって感じかな?

シーシアは3人ともに大切にされているのも、よくよく伝わってきた。



別に疎外感があるわけじゃないけど、黙って見ていた私が気になるらしく、シーシアがほほ笑みかけた。

「まいらさま。困ったことはございませんか?……イザヤさまは、まいらさまにおつらくあたられませんか?」

「へ?……まあ、確かに楽器を弾けとか歌えとか、無茶ぶりはされてますが、」

つらくはないですよ、と続けるつもりだった。


でも、シーシアが頬に手を当てて首を横に振った。

「ああ!やはり!……お気持ち、お察しいたします。」

そう言うなり、シーシアは私のすぐ前に駆け寄り、膝をついて、私の手を両手で取った。

シーシアのすみれ色の瞳がキラキラと涙で光っていた。


……えーと……泣いて同情されるようなことだったっかな?

さすがに、シーシアの感覚、よくわかんないわ。


私はやんわりとその手をほどいてもらおうとするのだけど、シーシアはむしろ私の手を引き寄せ頬を寄せた。


……親愛の情なのだろうけど……正直、気持ち悪かった。

何でだろう。

すごく不思議。


悪意は感じない。

でも、納得できない好意の押し売り状態に、私はむしろ不信感を抱いたのかもしれない。


だって、シーシアはイザヤの正妻になるヒトよ?

私は、実情は未定だけど、形はイザヤの側室らしいよ?

シーシアの立場で、これは、おかしいでしょ!


そうツッコミたいのに、シーシアはさめざめと涙を流して、私の手に頬ずりしてる。

まるで、神様の像にでもすがってるかのように。


私は、途方に暮れてティガとドラコを見た。

この状況の説明をして~!


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