ここはディストピア あなたは亡国の騎士 わたしは愛玩物

私は、しょんぼりして、謝った。

「ごめんなさい。……そう言えば、ティガは、自分の国だけじゃなく、この国も、それに異世界の国々のことまで知ろうとしてるもんね。……それって、すごいことね。私も、もっと勉強するわ。」


そう反省すると、ティガは逆に謝った。


「私のほうこそ、失礼しました。……今から思えば、イザヤどのが私にまいらに教育を託したのは……この国の者ではカピトーリのことをまいらに教えられないからでしょう。」

「カピトーリのこと……」


何だか嫌な予感がする。

イザヤは、この国がいずれはカピトーリに併合されるとか、カピトーリが周辺の国を統治するとか言ってたけど、……もしかして、そのための準備なの?

私は、オーゼラのことよりも、カピトーリの常識や文化を学ぶべきなのだろうか。


「……なんか、怖いね。」

背筋に本当にぶるっと震えが走った。


「そうでしょうね。まいらがもし異世界からカピトーリに迷いこんでいたら、あるいは、まいらを最初に見つけたのがせめて私でしたら、最初からそのような想いはさせませんでしたのに……」

そう言って、ティガはそっと私の肩に手を置いた。

温かいその手から、ティガの優しさが伝わって来る気がした。



でも私は、強がった。

「ありがと。でも、勝ち馬に乗ってもつまんないし。」


それに、イザヤは馬鹿じゃない……と思う。

おそらく、保身のためにシーシアとの婚約を継続しているのだろう。



「……イザヤどのは、シーシアさまの夫である限り難を逃れることができるでしょう。でも、まいら。私はあなたが心配です。」

ティガの眉間に皺が寄った。

……そっか。

ちゃんと、私のこと、心配してくれてるんだ……。


何だかうれしくなってきた。



「イザヤの被保護者って立場は、不安定?危うい?」

調子に乗ってそう聞いたら、ティガは重々しくうなずいた。

「……カピトーリでは、王ですら側室や第二夫人を持ちません。シーシアさまはお優しいかたですが、叔母上はリタのこともあり、必要以上にイザヤどのの女性遍歴にピリピリしてらっしゃいます。そういう意味でも、まいらのことが心配ですよ。」

「えーと……もしかして、私、追い出されるの?殺されるの?」

半分冗談のつもりでそう聞いた。


でもティガはニコリともせずにうなずいた。




わー……。

そっか。

そういう世界なのか。