「よくわかんないけど、まいらがシーシアさまの邪魔しないなら、それでいい。」

「うん。しないしない。大丈夫。約束する。……それにね、私、好きなヒトいるもん。元の世界に。すごく自分に厳しいストイックなヒト。……イザヤとは全然違うし。」

そう言ったら、無性に淋しくなった。


もう二度と逢えなかったらどうしよう。

私、元の世界にちゃんと帰れるんだろうか。

泣いてしまいそう。



「どんなヒト?歳は?瞳の色は?髪の色は?職業は?」

多少興味がわいたらしく、リタがそう聞いてきた。


「私の国はほとんどのヒトが黒っぽい髪と、黒っぽい瞳。まあ、髪は明るくしてるヒトも多いけど。職業は、僧侶。歳は……私より19歳上。」


お母さんの中学の時からのお友達で、戸籍上はお母さんの義理の兄。

とても身近なのに、手の届かないヒト。



リタは目を見開いた。

「19って!え?35歳!?しかも僧侶って、聖職者ってこと?……まいらって……ますます、わかんない。」


「そう?でもね、すごくストイックでかっこいいの。何でも本質を見極めようと行動してはるねん。物心ついたときにはもう憧れてたから、同年代の男子は子供にしか見えないし、他の親戚もお父さんもおじいちゃんも、……何てゆーか、ズルいオトナな部分が目について……。」


誇張じゃなくて、本音だった。

孝義くんは理想の男性で、私にとって神様みたいな存在だと思う。

あのヒトに近づきたくて、料理もがんばるし、勉強もする。

あのヒトに喜んでほしくて。

あのヒトに認めてほしくて。



「ドラコは、ホンモノの騎士さまだと思ったよ。掛け値なしのホンモノ。だから、かっこいいって素直に思った。身体中、傷跡だらけで……」

そう言ったら、リタの顔がふにゃっと緩んで、少し赤くなり、そして泣きそうに歪んだ。

「……好きなんでしょ?リタ。ドラコのこと。」

真面目にそう聞いた。


うなずいたのか、うつむいたのかわからなかったけど、リタは肯定していた。



「顔も合わせないなら、何か理由があるんだろうけど、それでも、会えばよかったのに。どんなに強くても、あんなに身体張って戦うヒト、心配じゃない?……極端な話、次、会えるか、」

それ以上私は言葉を続けることができなかった。


リタは、わっと声をあげて泣いてしまった。