「母上。私と同じ名の鳥です。……羽根の色も、私の目と同じなんですよ。かわいいでしょう?」


イザヤがまるで子供のように見えた。


何となく、私もその場にしゃがんで目を閉じて両手を合わせた。

口の中で念仏を唱えて祈る。


はじめまして。

イザヤのお母さま。

お邪魔してます。


何となく、なりゆきで、お世話になってます。



***


金属的な高い音が響き渡った。


驚いて目を開ける。


イザヤが、楽器のようなものを弾いていた。

竪琴のようにも、小さなハープのようにも見えた。



ん?

バイオリンのように弓も使うの?



手を合わせたまま、じーっとイザヤを見つめる。


イザヤは、私にニッと笑いかけてから、弓と指を両方器用に使い分けて複雑な音色をかき鳴らした。


弦の素材は何だろう。

妙にキーンと金属的な高い音が耳に残る。

水琴屈のような涼やかな音。

嫌な音じゃない。


むしろ心地いい高音なのだが、どこかで聞き覚えがあるようなないような……


何の音楽だっけ?


メロディーらしき音階はアルペジオのようにイザヤの指から奏でられている。

そして、弦で厚みと深みのある和音の伴奏って感じ?

一つの楽器から出てるなんて不思議なほど、音の幅が広い。



てか、この高音の響きを、私は知っている。


キーンひときわ高い音が脳に突き刺さる。

音にとらわれる。


心地いいを通り越して、酔いそう……

 
クラクラしてきた私は、そのままべったりと床に座りこんでしまった。


白い床……。

どこもかしこも、白くて……。



あ。

思い出した。

あの時、聞こえた音だ。

竹生島に上陸した時。

どこからか聞こえてきた音楽は、この楽器だった。


それじゃ、あの舞い散った花びらも、竹生島の桜じゃなかったのだろうか。

このオースタ島の、ヴィシュナの花だった?


……わからない。

わからないけど、この音は知ってる。


胸に染み入る高音。


ご丁寧にイザヤは、キュイーーーーンと、まるでエレキギターのように楽器を鳴かせてから、私を見た。


その目が、何かを語りかけていた。

何を言いたいんだろう。

あれは……



「聞き覚えがある。元いた世界で気を失う時、最後に聞こえたの、その楽器だった。それ、なぁに?」


そう尋ねると、イザヤはうなずいた。