ここはディストピア あなたは亡国の騎士 わたしは愛玩物

亡き祖父の創業した会社で専務として奮闘してるお父さんは、現代のビジネスマナーでは目上のヒトには「さま」、目下のヒトに「どの」と教えてくれた。


でも歴史的経緯にうるさいお母さんは、「どの」は家臣を持つ身分のヒトへの敬称だと譲らなかった。



たぶん、ティガがイザヤを「どの」と呼ぶのは、お母さんの言ってた意味合いが近いのだろう。
 

貴族のぼんぼんで、騎士団長のイザヤには「どの」がふさわしいと思う。



でも、ティガはどうして自分の従妹を「さま」と呼ぶのだろう。


イザヤは、婚約者を神の花嫁だと言っていたけれど……昔の日本でいう斎宮みたいなものなのだろうか。



てか!

婚約者がもう何年も嫁いでこないのに、どうしてティガとリタは先に婚家に来てるんだろう。
 

それに縁者って、具体的にはどういう関係なんだろう。



……えーと、リタは、イザヤの夜のお相手、というわけじゃないよね?

私と同い年だし……リタからはあまりそう言った空気を感じないし……むしろ少年のようなんだもん。


2人は、イザヤにとって、どういう存在なんだろう……?

  
***


気がつくと窓の外が暗くなっていた。

部屋の中も、そろそろ薄暗く感じる。


私は、部屋の四隅にあるランプのようなものに目を向けた。


……どうやって灯りをともすんだろう。


そう言えば、パーマの話のとき、概念と技術はあるけど薬品がないって言ってたよね?
 
じゃあ、電気は、ないわけじゃないのかな?  


「電気はあるの?」


気になってそう聞いたら、イザヤは微妙な反応を見せた。


「あるんや……。」

「まあ、あると言えばあります。が、まいらの元いた世界のように、万人が当たり前に使えるものではありません。」


ティガはそう言って、どこからかライターのような小さなモノを取り出して見せてくれた。


「なぁに?」


顔を近づけてそう尋ねると、ティガは黙って、横に突起したスイッチを押した。


バチバチバチッ!!! 

と、青い火花が飛んだ。


「え!?スタンガン?」


慌てて、ティガから離れた。

ら、私の肩でくつろいでた鳥の伊邪耶が滑り落ちかけた。


「おっと!危ないだろうが!かわいそうに。いざや。来い。」


バランスを崩した青い鳥をとっさに両手で受け止めると、イザヤは伊邪耶を自分の肩の近くへと上げた。