ここはディストピア あなたは亡国の騎士 わたしは愛玩物

「あとでこの家も捜索させてもらうから、そのつもりで。」


ドラコの残した言葉に、ティガはずっとこだわり続けていた。


しばらくしてから、私を手招きした。

「……もしかしたら、既にイザヤどのはこの舘に逃げ込んだのかもしれません。……ドラコは、私たちがイザヤどのと相談するための時を与えたのではないでしょうか。」


私は、首を傾げた。

「どやろ?私たちと館を(おとり)に、イザヤを追い込んだのかもよ?……任務通り、殺すつもりで。」


ティガは、渋々認めた。

「私もそう思います。敢えてこちらに逃げるように仕向けた可能性が高いと。しかし、ドラコも、かなうことなら、イザヤどのを救いたいはずです。……先ほどの、イザヤどのとまいらが異世界に戻ったことにする策に賛同してくれたと思いますよ。……いずれにしても、ドラコは、最後にイザヤどのとまいらが共に過ごす時間をつくりたかったのでしょう。……私達は、それを有効に使いましょう。」


「うん。じゃあ、行ってくる!」


「ああ、まいら。食料と飲み物を。消化しやすいものと、……念のため、保存食も携帯してください。」


「わかった!」


ティガのアドバイスを受けて、私は台所に走り、すぐに食べられそうな食材をかき集めた。



館を出て、驚いた。

庭師さんがいつも丁寧に手入れしていた庭園が、無造作に刈り取られていた。


ドラコが私達と話しているあいだに、部下にやらせたのだろう。


念のために見に行ったら、馬小屋の馬も、どこかへ連れて行かれたらしくからっぽ。



「ここには、いいひんよねえ?」

一応、心持ち大きな声でそう確認した。


返事はなかった。




それなら……と、浜に出てみた。

桟橋に繋がれたイザヤの船は、いつものようにのんきにぷかぷか浮いていた。



さらに足をのばし、浜の温泉の小屋へと向かった。


こちらは、木のドアが割られ、桶や椅子が無惨な形で放り出されていた。

あまりにもこれ見よがしで、……私はイザヤがここにいると確信した。



「……イザヤ?これ、自分でやったの?」

そう声をかけながら、中へ入った。



奥の、湯壺の蓋が開いた。

「よくわかったな。……しかし、ここ、ジメジメしてるな。そなた、よくこんなところに潜んだものだ。」


不満をこぼしながらイザヤが姿を見せた。


相変わらず、全身ぴかぴかに綺麗で驚いた。