ここはディストピア あなたは亡国の騎士 わたしは愛玩物

無意識に、私は跪いてこうべを垂れていた。

神殿でイザヤがしていたように、神々に祈りを捧げる……。


ごめん、オーゼラの神々さま!

私、ちゃんとお作法とか、覚えてへんねんか。

でも、伝わるよね?届くよね?


イザヤを……どうか、イザヤをお救いください。


お願い!




「……まいら。気持ちはわかりますが、その異教の祈りは禁じられています。」


ティガは一応そうたしなめたけれど、……自分もまた、カピトーリの……いや、今ではインペラータの統一神へ祈りを捧げた。



慌てて、リタもティガに倣った。




私は、少し考え直して、……靴を脱ぎ、床に正座した。

そうして、おもむろに胸の前で合掌し、「南無阿弥陀仏」を繰り返した。



ティガとリタが、不思議そうに見た。



「……物心つく前から、こうして仏様にお祈りしてきたの。……許して。」



そう言ったら、ティガは頷いた。

「異世界の宗教はわかりませんので禁じようもありません。御随意に。……ああ!タカヨシは宗教家でしたね。なるほど。」




指摘されたら、急に孝義くんの気配を感じた……気がした。


……まさかね?

まさか……とは思うけど……背中が温かく感じる。


孝義くん?

仏様?


わからないけれど、長い長い空白の時を経て、私の心が慣れ親しんだ念仏に安堵を得た。





「……信じるものは救われるって言葉があるんやけど……、信心があって救いがあるんじゃなくって、……救われていることに信心がなければ気づかない……って、だけなのかもしれないね……。」

何となく、ぼんやりと感じた事をそのまま言葉にした。



ティガもリタも、キョトンとしていた。

たぶん通じてないのだろう。


でも、私は気づいた。

この救いのないディストピアな異世界でも、私は、こうして何不自由なく贅沢な暮らしをさせていただいている。


イザヤとティガに、そして大いなるものに導かれ、ずっと守られていたのだ。


あ、思い出した。


「……仏の御手(みて)に抱かれて……眠れ乙女子やすらけく……」


以前、リタに歌って聞かせた歌の歌詞。


……そうか。

そういうことなんだ。


私が、ジタバタしても仕方ない。


ここで生きることも、子供を授かったことも、……イザヤの生死も……意味があるのだろう。