ここはディストピア あなたは亡国の騎士 わたしは愛玩物

手持ち無沙汰で、そわそわしていると、すっかり大きくなったお腹を両手で抱えるようにしてリタがやってきた。


「……馬が近づいてくるよ。ドラコかな?」

うれしそうな声。



「さて。なかなかのスピードですね。」


ティガもそわそわして、窓辺に立った。


「残念ながら、ドラコではありませんね。……しかし書状を届けてくれたのかもしれない。下に降ります。」



待ちかねた返事を受け取ると、ティガは再びこの部屋に戻ってきた。

その表情は、先ほどまでとまるで違っていた。


緊張したおもむきで椅子に座り、手早く開封して一読すると、私を手招きした。


恐る恐る近づいて手紙を受けとった。


死、という文字が目に飛び込んできた。

思わず、ティガを見た。



ティガの目が、揺れていた。

銀色の瞳に涙がたまると、水銀みたいだなあ……と、こんなときなのに見とれた。



「……この世は、無情ですね……。」


ティガはそう言って、つと涙を流した。


こぼした涙は、当たり前だけど、無色透明の普通の涙だった。




「何があったの?イザヤどの、殺されたの!?」

リタが待ちきれずに尋ねた。



私は、慌てて書状に目を落とし、斜め読んだ。


イザヤは、逃亡中。

死んだのは……オピリアの元王妃……。


ミシルト……死んだのか……。


あんなに美人で、あんなに偉そうで、あんなに……かわいいところもあったのに……死んだ……。




「……イザヤどのは少なくとも今のところは、生きておいでです。が、ミシルトさまが戦いの中で命を落とされました。……オピリアをインペラータに併合されないように戦っておられるはずでしたのに、……事前に発覚するや、オピリアは自衛のためにミシルトさまたちを切り捨てたようですね。保護も援軍もなしでは、どんな精鋭も、()つわけありません。」

はらはらと、ティガは涙を流し続けた。


リタが手を伸ばして、一生懸命ティガの背を撫で続けた。



私は、もう一度頭から書状を熟読した。

さらにもう一度。

3度読んで、ようやく、事態を理解した。


……ミシルトの集めた戦士達が全滅したわけじゃないのね。

元々亡国の残党として生き抜いていたんだもん。

みんな強くてしぶといはず。


せめて……生きていてほしい。