ここはディストピア あなたは亡国の騎士 わたしは愛玩物

ティガは意味深なことを呟いて、黙り込んだ。



私の胸に、もやもやが広がった。


……打ち消しても打ち消しても……消えない不安……。


もやもやが、ムカムカに変わり……マジで気持ち悪くなってきた。




「まいら?」


リタに気遣われ、私は笑顔を作った。

でも、言葉を発しようとしたら……吐き気がこみ上げてきた。


慌てて、口元を抑えて、部屋を駆け出た。


でも廊下を走っているうちに、吐き気は消えていた。



……気にしないように、考えないようにしてるつもりなんだけど……深層心理では、やっぱり心配なのかな……イザヤのこと……。




「ごめ~ん。」


照れ隠しに明るく謝りながら部屋に戻ったら、ティガとリタがものすごく神妙な顔付きで待ち構えていた。


「まいら……。あんた……。」


なかなか続きの言えないリタに代わって、ティガが断定した。


「イザヤどののお子を、みごもったのですね。」



何を言われたのか、よくわからなかった。


「は?」



ポカーンとしてる私に、ティガは笑顔で言った。

「月のものがないのは、体調不良か、妊娠か心配しておりました。少なくとも、まいらの身体は健康体に戻ったということですね。まずは、おめでとうございます。……と、申し上げて、よろしかったですよね?」



いやいやいや。

頭が追いつかない。



私は、とりあえず椅子に座らせてもらって……それから考えた。




確かに、このところ、生理、なかったわ。


イザヤに逢いに行って、何度も抱かれたわ。



……そうか……妊娠したのか……。



無意識に、お腹に手をあてがった。



ここに、イザヤの赤ちゃんがいる?

……マジか……。



かつては、あんなに願ったのに……いざ妊娠したと言われたら……喜びより戸惑いと恐れが強いことに驚いた。



私、この世界で、無事に出産できるのだろうか。


……そのとき、イザヤは?

私のそばに、いてくれるのだろうか……。





「……うれしくないの?」

リタに問われて、私は頭を上げた。

「……わかんない。とりあえず、びっくりしてる。……てか!ティガこわっ!何で、私の生理まで把握してるんよ。やらしい!」

動揺をごまかそうと、口をとがらせた。


ティガは、肩をすくめた。

「こうしてお預かりしているのですから、まいらとリタの健康管理は、私のつとめです。……何も、やましいことも、いやらしいこともありません。」