ここはディストピア あなたは亡国の騎士 わたしは愛玩物

元の世界ほどにしっかりしたギプスはなく、添え木だけでは、やはり痛くて歩けない。

何度か抜け出そうとしたけれど、すぐに誰かに見つかってしまい、ベッドに強制送還された。


その都度、ティガにもリタにも、怒られ、諭され、なだめられた。




「……オースタ島の桜……もう、散った?」

ならば(から)()で……とばかりに、ティガにおねだりしようとした。


残念ながら効かなかったけれど。



「さすがに散りましたよ。それにその身体では。……せめて杖なしで歩けるようになってからでないと、お連れいたしませんよ。万が一、(くい)に船底を破られて浸水すると大変ですよ。」


ティガは、そう言って……にっこりとほほえんだ。



ぎくりとした。

杭って……もしかして……いや、もしかしなくても、アレだろう。



「……見つけちゃったの?」


恐る恐るそう尋ねたら、ティガは頷いた。


「私が見つけたわけではありませんが、島へ作業に通っていた者の報告を受けて、見に行きました。……私に内緒にしていたかった理由もわかりました。」



そこまで言ってから、ティガは少し間を置き……今度は頭を下げた。


「私は、イザヤどのとまいらを疑っていました……反逆の意志有り、と。すべて、誤解だったようですね。温泉の硫黄の匂いを、火薬の匂いと決めつけてしまいました。……申し訳ありませんでした。」


心からの謝罪だった。


真摯な言葉と表情に、私は、慌てて手を振った。

「いやいや。私のほうこそ、ごめん。……硫黄を軍事利用されたら嫌やなーって思ったら、つい、言いそびれて。」



ティガは、ため息をついた。

「……やはり、まいらは、化学の知識もあるのですね。……まいらのいた世界の教育水準は、私の想像も及びません。……とても、うらやましくもあり、恐ろしくもあります。……イザヤどのが硫黄の活用をご存じとは思いませんでしたが……まいらの知識は私にはとても計りきれず……怖くなり、……愛し合う2人を無理に引き裂いてしまいました。しかも、取り返しのつかない事態にまでなってしまって……私は、まいらに、どう償えばよいのか……。」


「や、マジで!償いとか、いいから!……でも、ティガと、もっとちゃんと向き合って話し合えばよかったねえ。」


しみじみそう言って……私もため息をついた。